【代表インタビュー】一人ひとりの尊厳を大切に、地域で支える——精神科訪問看護コモレビが目指すもの
株式会社ソシエテが運営する精神科訪問看護「コモレビ」は、「どのような境遇の人にも、尊厳を持って生きられる場所を」というミッションを掲げています。
代表の森本がこの事業を始めるきっかけになったのは、アフリカでの人道支援を経て日本に戻ってきたときに感じた、メンタルヘルスや孤立の問題でした。体調を崩している人、家から出ることが難しい人、社会とのつながりが薄くなっている人に、どうすれば必要な支援を届けられるのか。その問いから、コモレビの精神科訪問看護は始まりました。
今回は、ソシエテを創業した背景、コモレビが大切にしている支援の考え方、そしてこれから目指していきたい未来について、代表の森本に聞きました。
ソシエテを創業した背景
アフリカから帰国後、気づいた日本での社会課題
なぜ日本のメンタルヘルスという課題に行き着いたのでしょうか?
森本:アフリカでは、感染症や貧困など、命に直接関わる課題が目の前にありました。一方で、先進国に目を向けたとき、各国で共通して大きな課題になっているのがメンタルヘルスだと感じました。
「”先進”国が、本当により良い社会のモデル=”先進”であるのなら、メンタルヘルスの問題にも、もっときちんと向き合えているはずではないか」。そう考えたことが、私の原点です。
これには、当時フランスの国内で起きたテロ事件からも大きな影響を受けています。事件の背景には社会からの孤立や、居場所のなさがあるように感じていました。人が社会とのつながりを失い、追い詰められていく構造を、どうしたら変えられるだろうか。
そうした思いから、メンタルヘルス領域での仕事を考えるようになりました。

コモレビの特長——30分ではなく、40分を標準とする「対話」
多くの支援の形がある中で、なぜ「訪問看護」という手段を選ばれたのですか?
森本:前職では、不登校やひきこもりの方への支援に関わっていました。その中で感じていたのは、支援は、それを本当に必要としている人には、なかなか届きにくい構造があるということです。
たとえば、利用者さんが費用を自分で負担するサービスだと、どうしても経済的な負担が大きくなります。支援を受けたいと思っていても、費用の面で利用できない方がいらっしゃいます。
また、施設に通う形の支援だと、そもそも家から出ることが難しい方は利用できません。家から出られないからこそ支援が必要なのに、その人が支援の場まで来なければいけない。そこにもひとつの限界があるように感じていました。
その点、訪問看護は、利用者さんのご自宅にこちらから伺うことができます。生活の場に入り、30分から40分ほどの時間を一緒に過ごすことができる。この自由度の高さに、大きな可能性を感じました。
コモレビでは、あえて業界で一般的な30分ではなく、標準40分という訪問時間を設けています。その「10分の差」には、どのような意味があるのでしょうか?
森本:人には、自分の気持ちを言葉にするまでのペースがあります。訪問してすぐに、本当に話したいことを話せる方ばかりではありません。
最初は近況を話したり、体調を確認したりしながら、少しずつ場が温まっていきます。そして20分、30分と経った頃に、ようやく「実は……」と本音が出てくることがあります。
そのときに、あと10分あるかどうかは、とても大きいです。

私たちにとって、その10分は単なる延長時間ではありません。利用者さんが「患者」としてではなく、一人の人間として自分の気持ちを話せるようになるための、大切な余白だと考えています。
チームで支える主担当制が生む、安心感と健全な距離感
サービスの提供時にも「主担当制」という形を取られていますね。
森本:精神科訪問看護では、利用者さんとの関係性がとても大切です。一方で、支援が1対1に閉じすぎると、距離が近くなりすぎたり、ひとりの支援者の見方だけに偏ってしまったりするリスクもあります。
だから私たちは、主担当、副担当、エリアリーダーなど、2〜4名ほどのチームで一人の利用者さんを支える形を採用しています。
複数のスタッフが関わることで、いろいろな視点から支援を考えることができます。一方で、利用者さんにとって「毎回誰が来るかわからない」という状態にすることはありません。
顔と名前がわかる、安心できる関係性の中で、チームとして利用者さんに関わることを大切にしています。
また、私たちはオープンダイアローグの考え方も大切にしています。支援者が一方的に答えを決めるのではなく、本人が支援者との対話を通じ、自分自身で考え、選び、少しずつ生活や考えを整えていけるように伴走していく。そのような関わり方を目指しています。
ソシエテらしさ:理想の支援を追求し、共に育つ「5つの価値観」
チームで動く仕組みの背景には、スタッフの皆さんが同じ価値観を共有している強みを感じます。私たちが日々の意思決定や行動で意識している「5つの価値観」について教えてください。
森本:ソシエテには、メンバー全員が大切にしている「5つの価値観」があります。これは単なるスローガンではなく、日々のカンファレンスや意思決定の中で、実際に立ち返っているものです。この組織で活動する上で拠って立つ基準であるのでSociete Guiding Principles、頭文字を取ってSGP(エスジーピー)と社内では呼んでいます。

① 尊厳を大切にする
私たちが考える「尊厳」とは、利用者さんと対等な関係で向き合うことです。
医療や支援の場面では、どうしても支援する側・される側という非対称な関係になりやすくなっています。そんな中でも私たちは、利用者さんを一人の人間として尊重し、その人の考えや選択を大切にしたいと思っています。
② 理想を追求する
目の前にある課題に対して、「今できる範囲で仕方ない」と考えるのではなく、「本当はどうあるべきか」を考えることを大切にしています。
もちろん、現実には制度や人員、時間の制約があります。それでも、理想を置かずに目の前の対応だけを続けてしまうのであれば、わたしたちが存在している意義はありません。だからこそ、理想から逆算して、少しでも良い支援・あるべき姿に近づける努力を続けています。
③ より早く、より多くの人へ
私たちのミッションは、「どのような境遇の人にも、尊厳を持って生きられる場所を作る」ことです。
今はまだ、支援を届けられているエリアや人数には限りがあります。ただ、本当に良い支援であれば、一部の人だけに届くものではなく、もっと多くの人に届けていく必要があると考えています。
将来的には、コモレビの支援を必要とするすべての方に届けられるようになりたい、社会のインフラにしていきたい。そんな風に考えています。
④ 対話を続ける
精神科訪問看護では、すぐに答えが出ないことも多くあります。言葉が出てこないとき、関係がうまく進まないとき、支援が停滞しているように見えるときもあります。
それでも、不安に押しつぶされることなく対話を続けることが大切です。
人とのつながりが切れずに残っていること自体が、孤立や状態の悪化を防ぐ上で大きな支えになります。だから私たちは、簡単に決めつけず、諦めず、対話を続けることを大切にしています。
⑤ 自らを高める
良い支援を届けるためには、私たち自身が学び続ける必要があります。
社内では、学会に参加したり、本を読んだり、日々の支援を振り返ったりする文化があります。また、お互いを尊重しつつも、率直にフィードバックを送り合うことも大切にしています。
一人ひとりのスタッフが成長することが、利用者さんへのより良い支援につながり、会社全体の成長にもつながっていくと考えています。

病院の常識を「アンラーニング」する。未経験者を歓迎する理由
採用において精神科訪問看護の「未経験者」を積極的に受け入れているのはなぜですか?
森本:病院での看護と、地域での訪問看護は、異なる部分が大いにあると考えているためです。
病院では、治療のために一定のルールや強制力を働かせることができます。一方で、地域での支援では、利用者さんの生活の場にこちらが入っていく形になりますし、利用者さんは契約・利用の終了を決めることもできます。訪問看護の現場では、支援者側の都合を押しつけることはできません。
だからこそ、病院で無自覚のうちに「当たり前となってしまっていた考え方」を一度手放していただく必要が出てきます。これを私たちは「アンラーニング」と呼んでいます。
もちろん、病院での経験があることは大きな強みです。ただ、経験が長いほど、これまでのやり方を変えるのが難しい場合もあります。
わたしたちが大切だと考えているのは「目の前の人と対等に向き合いたい」「その人の自己決定、自立した生活を支援したい」という姿勢をもっていることです。
訪問看護の現場で成長していく上では、こうした姿勢を持っていることの方が、病気やくすりの知識を持っていることよりも、大切であると考えています。
精神科訪問看護の経験がなくても学び続ける姿勢があり、利用者さんの尊厳を大切にできる方であれば、私たちはぜひ一緒に働きたいと思っています。
どのような境遇の人にも届く、社会のインフラを目指して
最後に、ソシエテがこれから目指す未来について教えてください。
森本:現在、精神科訪問看護の業界では、サービス品質の低下や不正な保険請求などの課題が指摘されています。
だからこそ私たちは、まず自分たちが「本当に良い支援とは何か」を考え続け、それを現場で形にしていきたいと思っています。
そして、そうした質の伴った誠実な支援を一部の地域だけでなく、もっと広く届けていきたいと考えています。
会社としては、今後取り組んでいくサービスを、訪問看護だけに限るつもりはありません。住まいに困っている方への支援や、状態が悪くなる前から予防的に関わるような支援なども考えています。また、企業向けの健康経営支援や障害者雇用支援など、働く人が調子を崩す前に支えるサービスにも、私たちの経験を活かせると思っています。

いずれにせよ、社会的に課題が残る領域に対し、積極的に取り組みを広げていきたいと考えています。
「どのような境遇の人にも、尊厳を持って生きられる場所を」。
このミッションに共感し、理想の支援を一緒に追求してくれる仲間と出会えることを、私たちは楽しみにしています。