相手が発する「サイン」を感じ取ることがケアラーの重要な役割―村上靖彦『ケアとは何か―看護・福祉で大事なこと』読書会レポート
村上靖彦『ケアとは何か―看護・福祉で大事なこと』の読書会を8月23日、開きました。
中央公論新社のページでは、本書について、次のように紹介しています。
「やがて訪れる死や衰弱は、誰にも避けられない。自分や親しい人が苦境に立たされたとき、私たちは『独りでは生きていけない』と痛感する。ケアとは、そうした人間の弱さを前提とした上で、生を肯定し、支える営みである。本書は、ケアを受ける人や医療従事者、ソーシャルワーカーへの聞き取りを通じて、より良いケアのあり方を模索。介護や地域活動に通底する『当事者主体の支援』を探り、コロナ後の課題についても論じる。」
当日は、本書を読んだ人が集い、ケアとは何かについて考えていきました。
まず、今の気分や今日の晩ごはんなどを一人ひとり話してチェックインした後、一人ずつ感想を共有していきます。
本書を「すごく深い」と感じたと話す方や、本の中に出てきた「サイン」について語る方が複数いました。
サインとは、第一章「コミュニケーションを取るー「困難な意思疎通」とケア」に初めに出てくるものです。筆者は、ケアにおけるコミュニケーションを4類型に分け、その第一に「当事者からのサインをケアラ―が感じ取る」ことを挙げています。
そこで出てきた、ALS患者の目の動きを追って文字を読み取るときに、10文字読み取るのに3時間かかったというエピソードや、赤ちゃんを抱っこしたときにいつもより硬く感じたことから前日に何かが起きていたことを察する話が印象に残ったという感想がありました。
ひと通り感想を共有した後はフリートークです。
「利用者さんに困らせられたときに、それを困っていることを発している『サイン』として受け止められるときとそうじゃないときがある。その原因は人手不足だったりする。労働環境が悪いと利用者さんのサインをサインとして受け止めきれず、問題行動として扱ってしまう」という実体験に基づいた悩みが打ち明けられ、それに対して共感が集まりました。
ほかに「看護師とは、と尋ねられて『看護師とは人です』と答える場面があったけれど、それはケアの考え方を持っている回答だと思った。一般の人から見ると医療の専門職というイメージだけれど、それ以前に『人』だと認識しているのがプロだと感じた」という話もありました。
最後に会を振り返って再び感想シェアを行います。
「今日の会で、自分が追い込まれたらケアをできないという点が言語化できてよかった」
「ケアとは何かと考えながらケアをしたり、そう考える人が増えたらいいなと思う。同業者でもケアの方向性がある人もいるので、ケアとは何かと職場でもオープンに話せたら」
などの感想が寄せられました。
ケアとは何か考える良い機会になったならば幸いです。
ソシエテでは、今後も読書会やイベントを企画していきます。次の会が決まったらまたお知らせしますので、ぜひご参加ください。今後ともよろしくお願いいたします。