2025年9月17日(水)地域でオープンダイアローグを実践する―斎藤環さんの取り組みと、精神科訪問看護の交差点―
2025年9月17日(水)、コモレビでは精神科医・斎藤環さんをお招きし、地域におけるオープンダイアローグの実践について考えるトークイベントを開催しました。
リアルタイムで250名以上の方にご参加いただき、対話実践について共に考える時間となりました。この記事では、当日の内容の一部をご紹介します。
はじめに:つくばダイアローグハウスの実践
イベントの冒頭では、斎藤環さんが2024年に開設した「つくばダイアローグハウス」におけるオープンダイアローグ実践についてお話いただきました。
コモレビ代表の森本との対話形式で、質問を重ねながら、対話実践を継続するためのクリニック運営面の工夫や、手応えについて伺いました。
斎藤さんの、日々の臨床での実感がこもったお話に、参加者のみなさんも大きくうなずきながら聞き入っている様子が印象的でした。
続いて:訪問看護における実践の可能性 ― コモレビの場合
そのあと、森本から精神科訪問看護コモレビを設立したきっかけと、コモレビでの実践の歩みについてお話しました。
実は森本がコモレビを開設したきっかけは、斎藤環さんの2日間のオープンダイアローグのトレーニングセッションに参加し、オープンダイアローグの可能性を強く感じたことでした。創業以来、オープンダイアローグを現場での実践に落とし込めないか、試行錯誤しながら、利用者さんやスタッフとの対話を重ねてきたことをお話しました。

その後は斎藤環さんと、「もし斎藤さんご自身が訪問看護をするとしたら、どのような支援・サービスの設計にするか」「つくばダイアローグハウスにおいて訪問看護との連携はあるのか」といった問いを起点に、訪問看護におけるオープンダイアローグ実践について対話を行いました。
参加者からの質問と、共有された知見
当日は参加者のみなさんから寄せられたたくさんの質問にもお答えいただきました。
さまざまな角度からの質問が出たことで、みなさんにとって豊かな示唆が得られた時間となったのではないかと思います。
斎藤さんの回答の中で、対話実践に関心を持つ方どなたにとっても学びが多いと思われた内容について、こちらでもご紹介できればと思います。
参加者の方からの質問 :対話スキルを高める方法は?
- 対話の参加者に、斎藤さんが共同代表を勤めるオープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパンの「対話実践のガイドライン」(※)内にある「振り返りのためのチェックリスト」をお渡しして、振り返りをしていただくこと。そちらに基づき、毎回振り返りをすること。これが一番のスーパービジョンではないか
(※)インターネット上でダウンロードが可能です
参加者の方からの質問 :オープンダイアローグやリフレクティングを実践してみたいと思っているが、実際にどのように動けばいいか
- 1人ではやらず、チームでやることが大事
- 実践あるのみ。OPDとは、丁寧な対話のこと。つまり、相手を尊重して話を聞かせてもらうこと。「失敗すること」はあまりない。
- 構える人が多い。勉強している人は多いが、実践が広がっていないと感じている
- しかし、学んだことを身内だけで回すのではなく、対人援助の場面で還元してほしいと強く思っている。未熟なのはみんな一緒。やりながら学びを深め、より良い対話へ
- ファシリテーターの質問力は重要なので、一度はファシリテータ―を経験しておくことや、「どんな質問をするのがよいか」に着目しながら学ぶことは重要だろう
- 精神科医の大井雄一さんの「声に出して読みたいオープンダイアローグ」(※)も参考になる
(※)インターネット上でダウンロードが可能です
質疑応答の中では、医療のみならず、福祉や教育の現場、矯正施設におけるオープンダイアローグ実践にも話が広がりました。
「訪問看護におけるオープンダイアローグ実践の可能性は?」という問いに対して
「訪問看護は一番可能性があるのではないか」
「一番沢山の人に、対話実践を提供できるインフラじゃないかと思うのでぜひ実践を続けてほしい」
という言葉には、コモレビのスタッフとして、自信と勇気をいただきました。
スタッフとしての所感
コモレビのスタッフとして、今回のイベントを通じて改めて感じたことを以下に挙げます。
- 対話を実践しようとしている方たちの「始めたい」「続けたい」「より良くしたい」という思いが集まる場には、大きなエネルギーがある。250人以上の参加者とともに話を聞き合うことで、「自分だけではない」という共感と励ましが生まれたのではないかと思います。
- 森本が語った実践の道のりを共有することは、参加者にとって「自分の場にも取り入れられるかもしれない」という具体的なヒントになったと感じます。悩みながら続けてきたことを隠さず伝えることが、信頼と現実味を伴った学びになると思いました。
- そして何よりも、印象に残ったのは斎藤さんのこの言葉です:
「構える人が多い。勉強している人はたくさんいるが、実践が広がってない。対人援助の場面で還元してほしい。学んだことを外に開いて、困っている人に役立ててほしい。」
この言葉は、これからも実践を続けようとする私たちコモレビにとって、指針となるメッセージだと感じます。
ご案内:定期的な「体験の場」もご用意しています
今回のイベントに関心を持ってくださった方へ、コモレビではオープンダイアローグを体験できる場を定期的に開催しています。初めての方、これから実践を始めたい方にも開かれた場ですので、ぜひお気軽にご参加ください。
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